写真5~8は、春植えつけたものが芽吹き呼び枝も接ぎ 位置に届く状態になり葉性もそこそこですので自己の枝で呼び接ぎを実施しました。
今年根元へ呼び接ぎをして、来年アルミの針金で結束した部分から取り木をします。
作業解説と作業ポイント
実施時期は、樹木の成長時期で接ぎ枝が接ぎ部に届けば何時でもOKです。
呼び接ぎにふさわしい葉性であるか見極め、接ぎ位置を決定します。
底面が平坦になる様、あせりの少ない鋸でスリットを入れます。
接ぎ枝の太さに合わせ深さ、幅を決めます。
(接ぎ枝の太さとスリット深さが同じぐらいになる様に又幅は固定釘の太さも考慮し、スリット部の仕上げ面粗さは呼び接ぎ枝の成長との関係が在ります。
呼び枝の新枝で皮を削らず実施する場合は、鋸でスリットしたままでOK)
呼び接ぎ完了状態です。
接ぎ枝インの部分は葉を切除、アウト部はそのままにします。新芽の比較的柔らかい間に接ぐと活着が速い様です。
注意点
・接ぎ部にはトップジン等ペースト及びクリーム状の処置剤を使用すると被服され活着を阻害しますので厳禁。どうしても処置したい場合は、カットパスター又は水苔を枝イン側のみ行います。
本体側の巻きが早すぎると活着前にスリットが肉巻きし活着遅れし、活着してもドリル孔式呼び接ぎ同様になります。
盆栽つくりにか欠かせないのが接木である、特に呼び接ぎは、思うところに、思う様に幹の立替や枝の増加が可能である。
又、雑木類の呼び接ぎは、将来接いだ部分が判別出来ないのみか、むしろ味のある枝の喰いつきも期待できる。
何よりも素晴しいことは、雑木の場合、松等と異なり何十年経ても枝落ちしないことにある。
雑木つくりの条件に叶ったこの方法は、その樹の欠点を長所に替えることや長所を更に向上させる手段として、盆栽愛好家全てが実施すべき手法と考えます。
ここに紹介するのは、唐楓の寄せ植えを知人から頂戴したものですが、どの様に接木をすれば、樹が喜ぶのかを創造しながら紹介することにしました。
1、現状調査
写真は、白色部分が寄せ植えで用土の中の部分であり、緑色に見える部分が寄せ植えの体をなしていた部分である。
さて、この素材をどの様に生かすかが盆栽つくりの妙で在ります。
現状
1、幹の太さ:写真上6㎜、写下5㎜。
2、幹部長さ:写真上60㎜写真下75㎜。
私は、楽天的ですので何処が悪いではなく、何処が良いかのみを探します。
考えて下さい。この子達には何の罪はありません。
ややもすると我々は、樹の欠点ばかりを叱責し、良さを探す努力をしなかったのではないでしょうか?
写真の唐楓が、そう訴えている様にも見えるから面白い。
2、構想案つくり
過去の経験や知識から(判断出来なければプロの盆栽園や先輩から聞く)「何処部分がどの様な樹形に最適であるのか」の視点で観察して、構想案をつくる。
この時、「樹木も自分も生長する」ものであることを念頭に置くことが必要です。
即ち、成長と共に樹は長所欠点が変化しますので柔軟に構える必要があります。
自己願望のみを樹に押し付けるのではなく、他と異なる部分や自分の意としない部分を「特長又は長所」と見る努力が愛好家の真骨頂である。
1、の写真の唐楓は、二本共、根元から幹の部分に前後左右に適度の曲がりがあるものの優れた素材とは言えませんが呼び接ぎにより株立ちの樹形を想定しました。
3、呼び接ぎと取り木を想定した根の植え付け
根の片方を切除し、鉢に挿入できる根は可能な限り残し、ほぼ下の写真の位置で植え付けることにし、根連なり又は株立ちの樹形を創造してみました。
根を綺麗に処置しない理由は、樹勢を落とさず目的達成の作業を優先したいためです。
下の写真は、1,5号(径45mm)の鉢に入れた状態。
右側は、根が多くありませんが植え付けの時に位置を上げます。
下の写真は、植えた状態です。
私の場合樹の作り始めは株状に作っています。
理由は、唐楓、モミジは根の生育が良く、3~5年経ますと根の部分が癒着して幹状になります。
深鉢つくりの場合株立ちのつもりが模様木になってしましますので常に株立ちつくりをしています。
尚、株立ちの樹形を維持する場合は、浅い鉢で持ち込みます。
取り木時期:芽吹き前3月上旬又は葉の固まる6月上旬
挿し木時期:芽吹き前3月上旬又は葉の固まる6月上旬
取り木外し時期:葉の固まる6月上旬~中旬又は9月下旬
1、庭に植えた唐楓の葉刈り、追い込み前の状態
春の芽を7月上旬切り込みしたものが11月
下旬、写真の様に再度伸び、次年度の芽当たりがある。 実施時期は、富士で12月上旬以後の紅葉時が最適ですが参考実施しました。
2、葉刈り後、不要枝、伸び過ぎた枝切除した状態
葉刈り後、徒長した枝や不要枝は全て除去します。矢印の核部分は、7月上旬の切り込み傷ですが処置を丁重に行い腐り込み防止します。
矢印Aの部分は、春1,5mmのアルミ線で結束しておきカルスを溜め、太りも促進させました。
春枝先に赤実が見える時期が挿し木に適しています。
3、挿し木
庭木から切り落とした挿し穂、結束部にはカルスたまりもあり太さが得られた様子が伺えます。
挿し木位置はこの位置になります。
挿し穂と用土の密着性を高す。動かぬ様固定し、荒風防
植え土の中心部に1mm位の細かい土を5CC程入れ
め用土と挿し穂を密着させま止と午前中日照場所で管理。
取り木時期:芽吹き前3月上旬又は葉の固まる6月上旬
挿し木時期:芽吹き前3月上旬又は葉の固まる6月上旬
取り木外し時期:葉の固まる6月上旬~中旬又は9月下旬
1、取り木、挿し木前年の枝つくり
推奨時期は紅葉開始時ですが先行作業をしました
2、結束して小枝を作った状態
Aは、2年前の取り木の傷後です。
取り木前に呼び接ぎをした部分が、直径2cm程になりアルミ線1,2mmで結束して、小枝を作りながら取り木又は挿し木の準備をしました。
あまり枝を伸ばさず小枝を増加させる様準備作業をしました。
Bは、結束するアルミ線がずれない為の仮釘です。
これによって位置が定まります。
3、同上
直径3,5cmのC部で判るように、春巻いたアルミ線が微かに食い込んでいます。
枝をもっと伸ばすと本年中に根が出るのですが、小枝つくりを優先しましたので本年根は出ません。然し、トータル的には、仕上がりは速いと考えています。
この位置は、障害になるものがありませんのでDに呼び接ぎをしながら、取り木をすることにします。
4、次ぎの作業を考慮して呼び接ぎをしているところ
Dは、更に葉性の優れたものが入手出来たので、別の鉢から呼び接ぎをしています。
尚、この木から来年は7箇所取り木又は挿し木が出来る様、事前準備しましたが全て葉性の良い枝を呼び接ぎしたものです。
5、切り込む予定の根に呼び接ぎをしたところ
Eは、不要根を切除する前に呼び接ぎをして置きますと、切除と同時に3cmの木が出来ます。
しかも、接いだ枝を手前に曲げますと鋭さのある樹形が創造できます。
樹が呼吸している部分であれば捨てるところはありません。工夫して下さい。
6、将来の正面
現在2箇所に呼び接ぎをしてありますが更に、来年3箇所、幹を切り落とした後2箇所に呼び接ぎをし、七幹の株立ちに仕上げたいと考えています。
尚、現在の根廻が15cmですのでこれ以上ゴツサを出さない様創りたいと考えていますが、プチサイズが好きですので多分又、取り木、挿し木になるのではないかと思います。
プチ盆裁といわず小品盆栽は、少し大き目の素材を一本入手して置きますと毎年何鉢か増えていきます。
尚、唐楓の場合、葉性の良いものを(盆裁屋さんに良く相談して)入手して下さい。
粗い葉性は、どうしても優しい小枝になりません。
良い葉性は、誰が作っても優しい枝が出来ます。
※№3月―13で継続記載
2月 唐楓 挿し木 中間報告の継続
1.2月24現在
2月24日用挿し木した通天です。
今まではそこそこの葉性であると思い庭に植え種樹つくりをしていましたが最近更に良い葉性が入手できましたのでこれを呼び接ぎすることにしました。
何様、今年春の挿し木に呼び接ぎするのは初めてですが、今年切り離せなくても良いつもりでトライしました。
2.呼び接ぎ状態
双方の葉を比較すると一目瞭然です。
過去の経験から唐楓と欅で葉性の悪いものを何とかしようと試みましたが成功例はありません。
葉性の良いものは、放置しておいても優しい枝になり且つ、その細枝が枯れこみません。
一様には云えませんが三つに切れこんでいる真ん中(矢印)が長いものが総じて良い葉性が多く、結果的に速く仕上がります。
1. 親木(元木)に状態
Bは、根元の部分を活用するため事前に呼び接ぎ(枝の無いところに溝を付け、この溝に別の枝をはめ込み枝を増やすこと)をします。
A―Aで切断して挿し木をします。切断は、鋸又は又切り鋏(盆裁専用鋏)で行います。
この時、葉は1枝に2枚以下にします。
2. 挿し穂の傷口をきれいに削り薬剤処置したところ
事前に発根剤及び活性剤を適量、水に溶かして置き切り離した穂は速やかに水に入れ乾燥防止します。
切断面は、切れるナイフで仕上げ、挿し木用土を準備した後、挿し穂を取り出し、ティシュペーパーで水分を拭き取り後、トップジンM塗付、カットパスター塗付の順で切り口の保護をします。
3. 挿し穂を固定したところ
挿し木用土の上に挿し穂を押さえつけ針金で固定します。
固定後Cの方向に持ち上げ、動かない様にアルミ線で固定します(動くものは、発根しないことが多いです) 再度発根剤、活性剤の入った水に浸けながら再固定し、表土の2箇所対象に水苔を置き乾燥を防止します。
管理場所は、朝日が2~3時間当たる棚下で、保護キャップ等で防風対策を要します。
1. 挿し穂
回転台に刻字した線が1cm幅ですのでそれぞれ3cm位の太さがあります。
太い部分を挿す場合、庭木等の樹勢の良い部分より鉢植えの締まった幹又は、古味のある部分は腐り込みが少なく、高発根率が得られます。
台木からは、回し鋸で切り落とし(水を掛けながら)小刀で切り直しトップジンMを薄く塗付します。
2. 挿し木後
植え土の中心に窪みを付け、1mm程の土を入れ大さじ一杯位入れ(挿し穂と用土の密着性を高めるため)挿し穂を押し付けます。
灌水後アルミ線で挿し穂と鉢を固定し、挿し穂の先を持ち上げても動かない様にするのが発根のポイントです。
後は、風よけ対策と午前中の日照で管理し、伸びた芽はそのまま伸ばします。
3. 挿し穂切り取り後の親木
親木には、ご苦労様でも今後3年同様の挿し穂提供をお願いする予定です。
但し、現在呼び接ぎ中の部分で将来の方向を検討しながら、来年も3箇所の挿し穂作りを考えています。
見ての通り、立ち上がりや根配り等見るべき部分のない畑つくりですので根から全てを使い盆裁にするには、年数を要しますので可能な限り追跡します。
1. 挿し穂を切り離したところ
他の樹種同様、前年の紅葉時追い込み(不必要な枝を短く切り込むこと)をかけておきます。
今年新たに出る新芽の勢力で発根を即すことがポイントの様です。
尚、芽数が多い方が様結果が得られます。
2. 挿し穂の傷口をきれいに削り木質部を薬剤処置したところ
切り離した部分を、切れるナイフで切り直し、トップジンを塗り、更にカットパスターを木質部に貼り付け腐り込み防止をします。
3. 挿し穂の固定したところ
挿し木は、通常の植え土の中心(挿し穂の切り口が接触する所)に窪みを付け小さじ1杯にミジン(1?1.5mmの土)を入れ、挿し穂を押し付けます。
押し付けた後、充分腰水(鉢ごと水の中に浸けること)をして、アルミ線又は紐で動かない様に固定します。
挿し穂を持ち上げ動く様では、根は出ず枯れてしまいます。
1. 現状
前年から、庭に植えた唐楓の一部を取り木又は挿し木する計画をたて、その部位を結束して、木つくりをして置きました。
取り木でも良いのですが、来年の部位つくりの関係がありますので切除し、挿し木をすることにしました。
矢印部の切り離し部はトップジンMで保護します。
2. 挿し木の位置
作業台に1センチピッチのセンを引いてありますので、太さが想定出来ます。
太いところは、4センチ位あると思います。
これ位の太さを挿し木する場合は、前年に結束しておくと発根率が上ります。
この時期切除して挿し木する場合、木異質部への腐り込み防止策(トップジン、カットパスター等で)が必要です。
3. 挿し木の位置
用土は、各々が使用しているものに、1〜1,5ミリの細かい土を切り口部に置き密着性向上を図ります。
当てゴムを付け針金で鉢と挿し穂を固定し、親指大の水苔を2〜3箇所置き乾燥防止し、保護室で管理します。
又、写真では、判り難いのですが枝先は、ピンク色に変化しつつありますが春の挿し木の適時と思います。
盆裁は、絵画や彫刻とは異なり生き物であり、
植物の生きている姿の基本的条件は根との一体感に有ると云えます。
樹の前後左右を見て、写真1の様に根元部が少し奥に引きながら立ち上がる様が良いと思います。
写真2は、お腹を突き出した様な感じがしますのでいけません。
写真3の状態では何をどうするにも判断不可。
写真4のレベルに透かしますと不要枝や不良枝が解かり、解かれば作業につながります。
写真3,4のズミほどでは在りませんがこの通天楓も葉を透かし、
葉切りを行いますと どの様に針金かけをするのかが把握できます。
この通天楓は枝数より細く少し長めの枝で構成する株立ち(9?11幹)を目指しており、
私の最も好きな樹形です。モミジ、楓の真骨頂が問われます。
ポイントは、芽あたり部から根が出るので芽当り増加の対策を。
唐楓、モミジ共発根し易い樹種です。
狙いの樹形をイメージし、何処から根を出すのか決め、この部分に芽あたり条件を作る。
【唐楓の挿し穂】
【モミジの挿し穂】
ウメモドキやキンズ、クチナシ等は、木質部と木皮の間からも根が出る発根容易な樹種です。
発根が容易と云っても狙いの樹形に添った挿し穂作りをお勧めします。
【ウメモドキの挿し穂】
【キンズの挿し穂】
発根率向上のポイント
- 芽当りのある部分を用土に接触させ発根を即す。(基本条件)
- 芽当りを多くして、発根確立を上げる。
- 挿し穂を固定する。(必須条件)
- 木本体等芽当りの無い部分は切除する。(枯れこみの原因)
- 荒風を当てない。(乾燥防止)
- 日に当てる。(朝日?午前中の日照で)
- 灌水する。
- 我慢する。
事前準備
- モミジ、楓、ウメモドキ等は、前年紅葉時。
- キンズ、クチナシ、チリメン等の温暖樹は、夜の気温平均5℃以上になってから。