桂アーカイブ

3月 古枝挿し木(チリメン桂事例報告)

古枝の挿し木を奨励していますがここでは、活着率の高い樹種においてより完成木に近づけるため、小枝の多い部分の挿し木事例を紹介して、挿し木は、挿し穂の選択が重要である旨理解し、実践して頂くことをお勧めします。

1、挿し穂による差

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挿し木及び接木の実物
左のる月が06年6月18日の挿し木、次が05年4月3日に挿し木、右端は06年6月18日接木したもの

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同上葉刈り後

写真1と写真2を参考にそれぞれ06年挿し木と05年挿し木を比較してみると枝数では06年のほうが多く、05年は僅かではあるが幹の状態が太い様に見える。
右端の06年挿し木も接穂の選択が重要となる。

挿し木の時期は4月~7月上旬位までは、実施可能であることが解った。
然し、4月の挿し木(新根が動き出す時)は発根までの時間を要します。
即ち、長期間の保護管理時間を要し、6月の挿し木は、3~4週間で発根が得られますので管理期間が短くて済みます。

2、05年4月3日挿し木の最良品

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樹高6cm

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樹高7cm

写真3、写真4は05年挿し木の最良品でありそれぞれが長所を持っている。
これを写真2の③と比較して見ると挿し穂選択の重要性が判ります。
写真3は、小枝が多く鑑賞出来る状態であるが根張りは不充分。
写真4の様に、挿し穂の切り方で根張りの誇張も可能。

3、大型小品盆栽からミニ盆栽へのトライ


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樹高7cm

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樹高5cm

写真5、写真6は15年程前に購入した樹高18cm位のものでした。
合計3本購入したものを培養過程で1本は枯らしてしまいました。

当時はミニのチリメン少なく何とか樹高9cmを目指してきましたが今だこのレベルです。
このままの培養では大きな傷がいえるまでには今後何十年もかかりそうです。
数十万円で購入したものが15年経てこの状態ではストレスが溜まりますね。
これ等大きな盆栽を小さくする手法を断念する引き金になった樹であり、小生50歳を契機(13年前)に楽しみながら良い盆栽をつくろうと考え、以来古枝挿しに取り組ました。
捨てる様な枝で作るのですからストレスは少なくて済みます。

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写真7は、06年6月18日に挿し木したものです。
写真6と比較すると枝数が多く2年後の秋には、展示に堪える状態になります。
完成の暁には写真5、写真6のほうが見ごたえのある樹になるでしょうし、価値も高いでしょう。

然し、楽しむと云うことは、飾って見る、見せることにありますので幾ら良い幹でも幹だけでは展示出来ません。
挿し木の容易な樹種は(チリメン桂、クチナシ、ピラカンサス、ニレ欅等)小枝の多い部分の挿し穂選択が楽しみながら将来を創造するコツと言えます。

クチナシ、ピラカンサスの於いては、春本鉢に挿したものを秋の展示会に出展した事例も多くあり、ピラカンサス(赤実)に至っては実も付きました。
然し、その他の樹種で挿した年に実が付いた事例は在りませんので経験のある方はご教授下さい。

挿し木は、最低5本以上を同時に行い平均値で良否判断すると各々の環境に適合した時期や方法が実感でき、自信となり不必要なことを考えることもなく計画的に増殖出来ます。
然し、私は挿し木3年で展示するという行動目標がありますので写真2の④の様に、目標達成のためには、接木も大切な手段と考えています。

当然、古枝の取り木も推奨したい事項です。

2月 驚嘆の「石化チリメン桂」

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盆栽世界2007年1月号で紹介された、珍品「石化チリメン」を目にしたときの驚きと、珍品とは云え、江戸時代の古くから存在していたものに小品盆栽を趣味にして34年を経て初めて出会った不思議を覚えた。

早速、情報豊かな埼玉県や東京都在住のきらく会原氏と菊池氏に電話を入れ、「こんな珍品あったのかい?」。
答えは、両氏とも「始めて見たよ!まだまだ知らないことがあるね!」の回答であつた。
そして、「何十年やっても、まだまだ勉強することは多いねー」と、共に気持ちを新にすると共に、永く培養に勤めた関係者に敬意を覚えた。

幸い、盆栽世界愛読者限定「石化チリメン」特別誌上頒布応募」があり、早速申し込んだ。
今日か明日かと、待つこと2ヶ月、幸運にも写真2の「幻の石化チリメン」をゲットすることが出来、平成19年2月2日待望の「石化チリメン」と対面することが出来た。
早速、大事に育て多くの友人に分けるべく培養計画を立てた。

1、ベンチマーク(基点)

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入手時のまま。
石化作用とは、生物の遺骸に炭酸石灰、珪酸等が入り込んで、元の組織を置換し、硬くする作用と言うが、ここでは、幹より吐出している部分を石化部と単に呼ぶことにする。

石化部分の葉は小さく石化しない部分は、通常のチリメン桂と変化はない。
又、鉢抜きして判る範囲の用土は、赤玉3~2ミリ。表層は1ミリ。
植え土の中に若干の鹿沼土が見える。

又、石化の無い部分を見ると、他のチリメン桂に勝るとも劣らない葉性である。
現状を数値的に表すと、①樹高:91ミリ。②葉張り:155ミリ。③立ち上がり部:径6,85ミリ。④立ち上がりより20mmの部分の幹幅:27,8ミリが概要である。

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写真3は、樹高10m位の桜の中程に、他の枝には見られない枝の多い部分が在る。これは、近くの宇多利神社の桜、染井吉野である。
私が勤務したビヨンズ(株)の事務所前の桜にも、この様な突然変異的部分があった。(てんぐす病?)
しからば、何故この様な変異が発生するのか?不思議である。
解明を思う時、写真で可能な限り、表し、諸兄、諸姉のアドバイスを得る以外に方法見当たらない。

よって、写真で表せる全てを伝え、教えを願うこととした。

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写真4で注目すべきは、石化部分の葉はが、他と比較して小さいことに在る。

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写真5は、写真4の葉の小さい部分を左側から拡大撮影したものである。

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写真6は、写真5の裏側から撮影したものであるが、石化部は平幹状であり、側面から見ると1,2ミリの厚さであり力量感に欠ける板状である。
又、板幹の部分には数珠状に繋がる芽当たりが見える。

ここで、石化の定義を考えてみよう。
「①生物の遺骸に②炭酸石灰や③珪酸が入り込む」との事である。

想定される部分は、該当する直接部分なのか?又は根なのか?考えるだけでも楽しい。
植物の生理から想定されることは、根の異常が幹や枝に現れるのが一般的である。

然し、何らかの刺激により枝葉が萎縮してこの様な状態になるのかは、現時点では解明出来ない。
今後、図書館での調査か農林試験場への問い合わせ、結果が得られれば追記することとするもののこれらが外面で観察出来る全てである。
然し、この状態(現象)を石化と云うべきか非かが問題として残るものの、次のアクションは起こすこととする。

2、現状把握(予定項目)

(1)提供先への聞き込み
(2)根と石化部の関係
(3)用土(PH等特に鹿沼との関連、鹿沼土は根に刺激を与えるといわれている)調査
(4)その他

3、仮説の検証

検証に欠かせないのは検体の確保である。
外面的検証は入手した親木(写真1の全容)の各枝で可能である。
根及び用土や培養法、使用薬剤等による検証の検体は、挿し木で増殖させることとする。

(1)親木での検証
 イ、指定の部分を切り込み
  ①そのままに放置する
  ②殺菌剤トップジンを塗付する
  ③成長調整剤スミセブン50倍、100倍、200倍、を噴霧する
 ロ、切り込まず伸ばす

(2)挿し木で増殖後の検証(検体は検証事項毎N=5以上とする) 
 イ、用土調査(標準的植え土+鹿沼土10%、20%、50%)
   鹿沼土検証理由は、根に刺激を与えると聞いたことがあるため
 ロ、肥培調査(N主体、P主体、標準肥おまかせの増減、三菱化成IBの増減)
 ハ、用土への検証
  ①成長調整剤スミセブン(300倍)の投与
  ②炭酸石灰の投与(炭化カルシュームを含む温泉か鉱泉水で良いはず)
  ③珪酸の投与(塩酸にレンガを浸け、堆積物が出来れば多分珪酸)
 二、枝葉への検証
  ①成長調整剤スミセブン(50、100、200倍)の投与
  ②炭酸石灰の投与
  ③珪酸の投与
2007年2月3日現在

4、葉刈りの実施と調査

石化チリメンは、通常チリメンより芽動きが10日程遅い更に石化部分が芽動きは皆無。よって石化部の葉刈りは(一部実施)芽動き時まで待つこととした。
(1)葉刈り実施で解ったこと(感じたこと)
  ①葉の脱落抵抗は、石化部と石化以外部では石化部が劣る。
  ②石化以外部の枝は、培養管理及び樹齢に関係する部分は在るものの通常チリメンと比較し、弾性に劣り容易に欠損する。
  ③斑は、写真4でも判別できるが春になり葉が緑をおびてきたため鮮明に判別出来る。これは通常のチリメンには見られないが藪チリメン(丁花桂の変形)には、同様の斑が見られる。
2007年4月9日

5、挿し木

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(1)既に石化している部分の挿し木
写真7は石化部分の挿し木、樹高3cm程の超ミニサイズが可能と思われる。
間延び部分は更に分割し、1~3cmの挿し木14鉢。
2007年6月8日実施。

実施時期的には、もう少し速いのが好ましいと思われるが楽しみである。

6月 チリメン桂 取り木

(目標:3週間で本鉢上げ)

1. 現状

3月31日友人達と久しぶりに静岡の苔聖園を訪問。
園の入り口にこの手のチリメン桂が数十鉢あり、中の一鉢で取り木つくりを考え「これ幾ら!」聞くと、「そんなのほしければ上げる!」が回答である。
持ち帰り取り木の構想案つくりと肥培により秋には、本鉢上げを狙いました。
尚、葉性はイマイチの様子です。

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2. 現状

取り木位置は、アンダーラインの部分で実施するのですが、肥培が過ぎたのか新芽が随時出ていますので環状剥離したとき新芽の痛みが考えられるため新芽の切り込み、柔らかい葉を半分で切る。
取り木作業実施後の保護等現時点で推定できることは、実施することとした。
取り木作業も部屋を密閉し更に、灌水を繰り返し剥離部の乾燥対策で剥離結束併用法実施。

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3. 取り木

取り木Aは、新葉の切込み実施。

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Bは、現状で取り木。双方の差の有無が検証出来ます。保護キャップ1週間保護します。

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※6月14日現在、心配した柔らかい新芽の傷み等在りませんでした。

培養作業目安表 葉物類:チリメン桂

チリメン桂 ※超推奨樹種
分類 葉物類 実施時期(於:富士市)
植替 頻度 若木⇒1~2年  古木⇒3~4年 6月上旬 樹の固定 寒期作業厳禁 底根カット
根切除 2/3、走根は元で 1/3、走り根
使用土 赤玉8、桐生2 赤玉8、桐生2
使用鉢 仕立鉢、 鑑賞は色物鉢
鉢サイズ 模様木⇒樹高程度、株立ちその他⇒樹形に適合させて
植位置 鉢の空き寸法は流れ方向1,6、反対方向1、前後1:1、
植替後 防風対策
整姿 樹寸法 模様木⇒上下1:左右1,6直幹木⇒上下1:左右1,4比、 株立ち⇒上下1:左右2
針金 培養中⇒アルミ線、※寒期作業厳禁 6~9月
枝引き 培養中⇒アルミ線、 随時
芽掻き ピンセットで 随時
芽摘み 鋏で 随時
芽切り 鋏で 随時
葉刈り 鋏で 11月
葉透し 随時 随時
葉切り 強い枝の葉半分を鋏で 5~7月
力枝 幹、枝の太さ調整 ※切除後トップジン&カツトパスター 傷巻き難 -
呼接ぎ 経験なし -
灌水 水かけ 表土白く乾いたら 各自頻度設定
腰水 水通りの悪い鉢のみ 随時
葉水 好む 夕方
置場 日照好む、通風好む ※冬季保護 -
肥料 中量~少量 4~6月中量、9~10月少量
害虫・殺虫 油虫他 毎月、5月末と7月末の産卵、孵化時2週連続
スプラサイド他2種類を交互
病気・殺菌 強い 同上
ラーリー他2種類交互
増殖 実生 経験なし -
挿し木 古枝挿し ※推奨事項 4月芽吹き時又は6月
根伏せ 成功経験なし 6月
取り木 結束、環状剥離 ※推奨事項 環状剥離6月
接木 間延び救済に有効 6月