私の樹形構想案の基本にしている絵です。
子供の頃、栗の大木にこの様な雰囲気の樹が実在しました。
樹の「ゆすれ」は、古木でしか表現できない時代感であり、探幽や応挙の絵にも類似の絵があります。
昔は、これ等絵の様な古木が多く在ったものと考えられます。
呉偉、伴大納言の絵とも人為的樹形ですが、これはこれで親しみがあり、樹が生活と共存しています。
栄徳の檜図の様な檜は確かに在りました。
等伯の絵や春草の「落葉」の様に建材に向いた樹も又樹です。
10人いれば10種類の樹形が創造され、
そこに映し出される情景の中の一樹こそ各自固有の樹姿であり、
プチ盆裁を画材にした豊かな想像は自己表現の理想と考えます。
よって、絵画始め、優秀盆裁の姿を真似するだけではいけません。
どの様な名品であれ、更に上回るために作業があると考え、
思考に整合した行動が盆裁つくりと考えます。
盆裁は、絵画や彫刻とは異なり生き物であり、
植物の生きている姿の基本的条件は根との一体感に有ると云えます。
樹の前後左右を見て、写真1の様に根元部が少し奥に引きながら立ち上がる様が良いと思います。
写真2は、お腹を突き出した様な感じがしますのでいけません。
写真3の状態では何をどうするにも判断不可。
写真4のレベルに透かしますと不要枝や不良枝が解かり、解かれば作業につながります。
写真3,4のズミほどでは在りませんがこの通天楓も葉を透かし、
葉切りを行いますと どの様に針金かけをするのかが把握できます。
この通天楓は枝数より細く少し長めの枝で構成する株立ち(9?11幹)を目指しており、
私の最も好きな樹形です。モミジ、楓の真骨頂が問われます。
写真1のレベルでも良いのですが、更に誇張した一体感を求め、アルミ線で修正しました。
当初写真の裏側で見たのですがこの位置にしました。
特に矢印の針金で根の位置変更で雰囲気が変わります。
挿し木したばかりの樹は、一から作る必要があるももの各自の理想とする姿に出来る楽しさがあります。
芽当り部から下へ5ミリ以内で切除した挿し木、実生同様にゼロから育てる楽しさは正に我が子を育てるのと同じです。
片時も眼を離さず育てた子供は「まさか突然変異」と思う時期も在るものの高学年に成るにしたがい、自分の子であることを実感させられます。
子育ては、何ものにも変えがたい楽しいゲームであり、盆裁はそれに順ずるものです。
「step1: 針金かけ及び引き事前検討」の二例目のズミの例。
作業前
葉透かしにより観察可能な状態になります。
不要、不良枝の切除実施。
針金かけ(肩かり)
鉢は、しっかりと固定し、専用仮肩で線端を固定します。
針金かけ
針金かけは、太さの違いはあるものの「樹に巻く」ではなくピンセットに巻く様な気持ちで作業しますと枝を傷つけません。
針金かけ後
針金を掛け右に流れる株状の姿を作りましたが秋までには、変化もあると思います。
結実を無視して枝の強弱を調整するのであれば切り込むのですが、
出来れば結実も期待したいので切り込みは9月上旬に行い、
葉数は4〜5枚残すと結実が期待出来ます。
間延び防止のための針金かけも重要な作業です。
取り木の位置も選定出来ました。
1、現状1
2、現状2
それぞれ長短あるも右流れの樹は、時計周りの針金かけがなじみます。
3、根の固定
根をしっかりと固定して太地との一体感を作って下さい。
4、同、拡大
写真4は、アルミ線で根を固定しました。
写真2の立ち上がり部と比較しますと違いが分かります。
根上りは、本来立ち上がりが不安定になりがちですがこの作業実施により、しっかりと太地を掴まえ鉢と樹が一体となっています。
5、針金かけ後
写真5は、不要枝を切除し針金かけをしたところです。
今後は、小枝を増加させながら半懸崖の樹形をめざします。
ポイントは、芽あたり部から根が出るので芽当り増加の対策を。
唐楓、モミジ共発根し易い樹種です。
狙いの樹形をイメージし、何処から根を出すのか決め、この部分に芽あたり条件を作る。
【唐楓の挿し穂】
【モミジの挿し穂】
ウメモドキやキンズ、クチナシ等は、木質部と木皮の間からも根が出る発根容易な樹種です。
発根が容易と云っても狙いの樹形に添った挿し穂作りをお勧めします。
【ウメモドキの挿し穂】
【キンズの挿し穂】
発根率向上のポイント
- 芽当りのある部分を用土に接触させ発根を即す。(基本条件)
- 芽当りを多くして、発根確立を上げる。
- 挿し穂を固定する。(必須条件)
- 木本体等芽当りの無い部分は切除する。(枯れこみの原因)
- 荒風を当てない。(乾燥防止)
- 日に当てる。(朝日?午前中の日照で)
- 灌水する。
- 我慢する。
事前準備
- モミジ、楓、ウメモドキ等は、前年紅葉時。
- キンズ、クチナシ、チリメン等の温暖樹は、夜の気温平均5℃以上になってから。