盆栽世界2007年1月号で紹介された、珍品「石化チリメン」を目にしたときの驚きと、珍品とは云え、江戸時代の古くから存在していたものに小品盆栽を趣味にして34年を経て初めて出会った不思議を覚えた。
早速、情報豊かな埼玉県や東京都在住のきらく会原氏と菊池氏に電話を入れ、「こんな珍品あったのかい?」。
答えは、両氏とも「始めて見たよ!まだまだ知らないことがあるね!」の回答であつた。
そして、「何十年やっても、まだまだ勉強することは多いねー」と、共に気持ちを新にすると共に、永く培養に勤めた関係者に敬意を覚えた。
幸い、盆栽世界愛読者限定「石化チリメン」特別誌上頒布応募」があり、早速申し込んだ。
今日か明日かと、待つこと2ヶ月、幸運にも写真2の「幻の石化チリメン」をゲットすることが出来、平成19年2月2日待望の「石化チリメン」と対面することが出来た。
早速、大事に育て多くの友人に分けるべく培養計画を立てた。
1、ベンチマーク(基点)
入手時のまま。
石化作用とは、生物の遺骸に炭酸石灰、珪酸等が入り込んで、元の組織を置換し、硬くする作用と言うが、ここでは、幹より吐出している部分を石化部と単に呼ぶことにする。
石化部分の葉は小さく石化しない部分は、通常のチリメン桂と変化はない。
又、鉢抜きして判る範囲の用土は、赤玉3~2ミリ。表層は1ミリ。
植え土の中に若干の鹿沼土が見える。
又、石化の無い部分を見ると、他のチリメン桂に勝るとも劣らない葉性である。
現状を数値的に表すと、①樹高:91ミリ。②葉張り:155ミリ。③立ち上がり部:径6,85ミリ。④立ち上がりより20mmの部分の幹幅:27,8ミリが概要である。
写真3は、樹高10m位の桜の中程に、他の枝には見られない枝の多い部分が在る。これは、近くの宇多利神社の桜、染井吉野である。
私が勤務したビヨンズ(株)の事務所前の桜にも、この様な突然変異的部分があった。(てんぐす病?)
しからば、何故この様な変異が発生するのか?不思議である。
解明を思う時、写真で可能な限り、表し、諸兄、諸姉のアドバイスを得る以外に方法見当たらない。
よって、写真で表せる全てを伝え、教えを願うこととした。
写真4で注目すべきは、石化部分の葉はが、他と比較して小さいことに在る。
写真5は、写真4の葉の小さい部分を左側から拡大撮影したものである。
写真6は、写真5の裏側から撮影したものであるが、石化部は平幹状であり、側面から見ると1,2ミリの厚さであり力量感に欠ける板状である。
又、板幹の部分には数珠状に繋がる芽当たりが見える。
ここで、石化の定義を考えてみよう。
「①生物の遺骸に②炭酸石灰や③珪酸が入り込む」との事である。
想定される部分は、該当する直接部分なのか?又は根なのか?考えるだけでも楽しい。
植物の生理から想定されることは、根の異常が幹や枝に現れるのが一般的である。
然し、何らかの刺激により枝葉が萎縮してこの様な状態になるのかは、現時点では解明出来ない。
今後、図書館での調査か農林試験場への問い合わせ、結果が得られれば追記することとするもののこれらが外面で観察出来る全てである。
然し、この状態(現象)を石化と云うべきか非かが問題として残るものの、次のアクションは起こすこととする。
2、現状把握(予定項目)
(1)提供先への聞き込み
(2)根と石化部の関係
(3)用土(PH等特に鹿沼との関連、鹿沼土は根に刺激を与えるといわれている)調査
(4)その他
3、仮説の検証
検証に欠かせないのは検体の確保である。
外面的検証は入手した親木(写真1の全容)の各枝で可能である。
根及び用土や培養法、使用薬剤等による検証の検体は、挿し木で増殖させることとする。
(1)親木での検証
イ、指定の部分を切り込み
①そのままに放置する
②殺菌剤トップジンを塗付する
③成長調整剤スミセブン50倍、100倍、200倍、を噴霧する
ロ、切り込まず伸ばす
(2)挿し木で増殖後の検証(検体は検証事項毎N=5以上とする)
イ、用土調査(標準的植え土+鹿沼土10%、20%、50%)
鹿沼土検証理由は、根に刺激を与えると聞いたことがあるため
ロ、肥培調査(N主体、P主体、標準肥おまかせの増減、三菱化成IBの増減)
ハ、用土への検証
①成長調整剤スミセブン(300倍)の投与
②炭酸石灰の投与(炭化カルシュームを含む温泉か鉱泉水で良いはず)
③珪酸の投与(塩酸にレンガを浸け、堆積物が出来れば多分珪酸)
二、枝葉への検証
①成長調整剤スミセブン(50、100、200倍)の投与
②炭酸石灰の投与
③珪酸の投与
2007年2月3日現在
4、葉刈りの実施と調査
石化チリメンは、通常チリメンより芽動きが10日程遅い更に石化部分が芽動きは皆無。よって石化部の葉刈りは(一部実施)芽動き時まで待つこととした。
(1)葉刈り実施で解ったこと(感じたこと)
①葉の脱落抵抗は、石化部と石化以外部では石化部が劣る。
②石化以外部の枝は、培養管理及び樹齢に関係する部分は在るものの通常チリメンと比較し、弾性に劣り容易に欠損する。
③斑は、写真4でも判別できるが春になり葉が緑をおびてきたため鮮明に判別出来る。これは通常のチリメンには見られないが藪チリメン(丁花桂の変形)には、同様の斑が見られる。
2007年4月9日
5、挿し木
(1)既に石化している部分の挿し木
写真7は石化部分の挿し木、樹高3cm程の超ミニサイズが可能と思われる。
間延び部分は更に分割し、1~3cmの挿し木14鉢。
2007年6月8日実施。
実施時期的には、もう少し速いのが好ましいと思われるが楽しみである。