小品盆栽の楽しみ方

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小品盆栽は楽しい

始めまして市川です。

私はミニ盆栽(40年位前は小品盆栽といえば三寸(9cm)位でした)が好きです。
世情と共にサイズ、価値観の変化は在りましても、何故小品盆栽なのかを考えますと今でも初心を変える事が出来ません。

小品盆栽はまず可愛いものでなくてはなりません。
そして綺麗(清潔)でなくてはいけません。
そして無限の創造を与えて、癒し、次の活力を与えてくれ、速く結果が出るのも現代的です。
私の生活とって小品盆栽は欠くことの出来ないパートナーであります。

その理由は社会生活の多くが妥協(我慢)の中で成り立っています。
妥協が出来る人を良識人と云うは何か切ない気持ちです。
そこで、何の妥協もせず、継続できるものは何か考えたのですが私にはこれといった才能はありません。

それが、近所の人に進められ始めたのが盆栽でした。
盆栽を始めて解ったことは、大半は樹木自身が出来てくれる事です。
盆栽づくりとは残りの数%を私たち人間が手伝えばいいものだと気づきました。
そして、残りの数%を徹底的に実践することに価値を求め 現在に至ります。

おかげで、会社勤めも継続でき平成16年5月に定年を迎えることが出来ました。
それは、仕事以上に考え、観察し、実践する事により双方に相乗効果を生む事に真の価値が在ります。
仕事には盆栽に取り組む姿勢を生かし、盆栽には仕事(会社勤め)で学んだ手法を応用します。
これが趣味を持つ最大の価値と思ったのが盆栽を継続している理由であり、何よりも、楽しいと感じることが大前提であります。

皆さんにお願いしたい事

1、何故 盆栽なのかのコンセプトを持って下さい。
その理由は、自分の体力、財力、場所、時間は人さまざまです。
可能な資源を考え自分に可能な盆栽の方向を定め大いに創造してください。
創造は無限であり無償です。

2、趣味に留めることです。
(道楽は収入の半分以上を費やすことだそうです。全国の平均年収から逆算しますと道楽のできる人は1200万円以上の所得者となります)
その理由は、趣味者はプロの様に上手には出来ません。
プロは専門的知識や技術、技能習得のため長期間修行をして盆栽園を開業しています。
然し、我々趣味者は時間が豊富ですのでプロより時間をかけ丁寧に行うことは出来ます。
即ち、プロより丁寧に作業することが趣味者の強みです。
そして、趣味者からプロが盆栽を買い求める現実も他の美術工芸品等に無い面白い現象であります。

3、美術品、工芸品等名品(国宝、重文)を見て(写真集で充分です)下さい。
その理由は、この中に盆栽に求める情景が表現されていますし 盆栽は世界に誇れる庶民芸術だからです。
絵画を見る場合は構図、バランス、筆はしり等隈なく見ることです。

私は橋本関雪の「幻猿」を見た時、驚嘆のあまり4時間位の時間を要しました。
猿の絵ですが小品盆栽つくりの大きなヒントを得ました。
丁寧の度合いを見つけたのであります。

又、盆栽は生き物であり変化します。
この変化を活用又は抑制する日常管理が必要ですので一般の芸術品とは異なる維持管理芸術であります。

これ等が「盆栽は難しい」の言葉に繋がっているのでしょうか?
盆栽は作るものではありません。
樹木の特徴や性質を生かす作業をすることだと考えます。

4、とにかくやってみる
何事もそうですが考えた、考えている、考えようとしているでは進歩しません。
やってみて、その結果を観察し、忘れないようにメモをし、次に生かすことを繰り返すことです。
日本人初のノーベル物理学者湯川秀樹先生が「創造とは模倣である、模倣は商品の模倣ではなくプロセスの模倣である」と言っています。
やり方のまねをして 新しいものを自分の考えで作りなさいということだと思います。

実践の手法は3現主義のみ

1、現場で(自分の棚で、展示会場で、人の棚で)
2、現物を(盆栽を、鉢を、乾燥を、根を、幹を、枝を、梢を、葉裏を、鉢穴を、土を等)
3、現実的に(葉が多くて見えなければ葉透かしをして、枝を移動して、肉眼で見えなければルーペや顕微鏡を使って、見えない鉢の中は匂いを嗅いで)

難しいことは在りません。
盆栽は見るもの、見せるものです。

根、幹、枝、梢、葉、花、実等毎日の水かけや植え替えで見ているといつもと違う、人と違う、昨年と違う等の点がなんとなく見えます。
何故だろうと考えるうち問題点や課題が整理され、やるべき事が判ります。
要は現実的観察に尽きます。

実践のポイント

1、ハサミ、刃物の仕上げ砥石は、粒度#5000以上で砥石上面が平坦であること
 使用後はコンクリートブロックかドレッサー砥石を使用して平坦に修正しておく
2、ハサミ、刃物の研ぎ終わった刃先のバリを強い布か皮のベルトで除去し、刃こぼれや初期磨耗を防ぐこと。

刃物は力で切る物ではありません、切れ味で切るものです。
名工の刃物の切れ味と用途に応じた工夫には敬服します。

私は杉や杜松の芽切りに鋏は使用しません。
相当切れる鋏でも切り口をルーペで見ると切り口が割れています。
切り刃角度10度以下に研ぎおろし使用していますがホームセンター等で市販されているアートナイフを研ぎおろしても使用出来ます。

私は盆栽園や愛好者の盆栽を見せて頂く時まず砥石を見ます。
砥石を見てその方のレベルを判断しますとほぼ比例しているので面白い。
(話だけでは幻惑されますので)

しばらくぶりに食べるお袋の手料理はどんな懐石やフランスの料理よりおいしさを感じます。
そこには母親の愛情と工夫の独自性が存在するからだと思います。
私たちの子供や孫が将来、なつかしく美味しい食べ物は?の質問に対し、コンビニの弁当や吉野家の牛丼等と答えられてはたまりません。

盆栽を通し、愛情と工夫でなつかしい情景を伝承したいものです。
食と自然に対しては人類全てプロ、自由な発想を期待します。