カイドウアーカイブ

2月 カイドウの取り木

平成19年1月27日、富士山盆栽組合の主催するオークションに久方ぶりに出かけた。
目的は、アケビの挿し木になる様な種木(盆栽培養の原材料)を入手することであつた。

下見(オークション開始前狙いの品を見定める)中、アケビと共にガレ(樹勢が低下している)ているが、なかなか古色感のあるカイドウを目にした。
同席した盆栽仲間のK・I氏もこれと、これはものになるね!私も同感であった。

オークションが開催され、幸い狙いの2本を入手することが出来た。
価格も安価な6千円であったのは、氏が私の購入希望を察知し、競合価格を提示しなかったためで在った。
氏に感謝すると共に、今後の培養責任を痛感した。

1、現状調査

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写真1のカイドウは、樹高50cm程の比較的若い樹であるが(ズミにカイドウを接木したものと思われる)大型盆栽愛好者としては、珍しく枝先部分の追い込みが実施されている。
然し、枝先その他には枯れ枝が多く水切れかと思われ、このため写真2~5は共に古色感のある取り木に絶好な箇所が存在している。

平成17年4月3日の植え替えと思われる表示があるので、今後3年位は植え替えをせず、取り木、枝つくり、取り木&挿し木を繰り返して行く事とした。

枝のガレが見えるため、今年度は取り木のみ実施することとする。又、細枝の取り木であり剥離&結束法を採用することとした。
合わせて、肥培、新芽針金の力点を置き、今年の取り木には実をつけないこととする。

写真2~は、主要取り木位置であるが、その他細物でミニに適した箇所は20数箇所を有する。

写真2は3箇所取り木予定
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写真3は5箇所の取り木予定。
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写真4も5箇所の取り木が可能である。
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写真5,6共取り木の箇所は多い。
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今年の秋には20鉢以上のプチ盆栽が鉢上げされるはずである。だから、プチ盆栽はやめられない。
仲間の喜ぶ顔が目に浮かびます。

2、カイドウ取り木作業

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①取り木(挿し木)溶液の建浴
水    =500cc、メネデール=5cc、HB101=2~3滴後攪拌する

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②水苔を溶液に浸ける
(乾燥水苔は強く握り、溶液の中で離すと水苔に液の浸透が速い)

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③水苔を1cm程にカット

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④水苔をカットしたところ

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⑤取り木箇所の選定

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⑥鋏及びナイフで皮の部分を剥離する

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⑦剥離部に取り木液を噴霧し保水

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⑧剥離部をナイフで仕上げ、針金を3周巻き、形成層を遮断する

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⑨剥離部に水苔を付ける

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⑩保護ビニール(黒)を覆い下の部分を縛る。この時、水分が抜けるレベルに縛り、水苔を剥離部分に当たるように整える

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⑪保護ビニール上の部分を縛る。
この時、下より強く(微かに水分が浸入するレベル)縛る。
尚、下部の縛った部分より下部にビニールが下がっている場合は、一番低い部分に孔又はスリットを入れ水溜り防止をします

これが一連の取り木作業です。黒いビニールのの方が、発根は良いようです。
又、保護ビニールの中に水が溜まると発根を遅ららせるのと共に発根した根を腐らせることがあります。

3、切り離しの時期

切り離しは、発根した白根が茶色に変わってから行います。
旺盛な根はビニール袋を突き破り出て行きます。
又、水苔除去は、根を脱落させないように丁寧に行う。

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写真右はカイドウの取り木の全容です。
全41箇所の今後の経過は、随時報告します。

07,3,1現在

4、第1回経過報告

07年8月29日、取り木外しの実施。
時期的には少し早いが来年の取り木箇所つくりのため切除した。
結果は。41箇所取り木中完全発根は15本、不完全発根9本、枯れ落ちは20本で在った。

特に下向き枝は、殆んど枯れ落ちてしまった。
ガレ木であるためある程度予想はしていたものの発根率50%はであり、今後取り木をする場合は、事前に下向き枝を上向きに矯正しておく必要がある。

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・鉢上げした取り木

写真上の右端は、別の若い親木から取り木したものであり、その他は該当の古木から取り木したものである。
幹の古さも適度にあり花芽も確保されており、右端のものとは大きな差があり、結実すれば鑑賞に堪えるものと考える。
07,9,17現在

1月 カイドウ、根活用の根上りつくり

プチ盆栽の増殖に欠かせないのが根伏せである。一鉢植え替える度に2~3鉢出来るのですから、これをやらない手はない。

然し、全の樹種で根伏せ出来る訳ではない。お勧めできる樹種は、ズミ、カイドウ、リンゴ、ロウヤガキ、キンズ等である。今回は、カイドウに単純細根を使い、作業を紹介致します。


1、平成18年10月21日友人に分けて頂いたカイドウの植え替え実施。
 (1)面白い曲がりをしている根は、同日根伏せ、樹の部分は通常の植え替え実施。
 (2)1~1,5ミリの細根が鉢底でグルグル巻きになっていたものを
   イ、切り口にトップジン塗付後、ティシュテーパーで拭き取りビニール福利に入れ
   ロ、500CCの水にメネデール2,5CCと HB 1012~3滴入れ噴霧
   ハ、袋を密閉し温室の中の日陰に保管(半月毎位に湿度確認:水溜り無く根が湿っていればOK)

2、平成19年1月20日先端部に発芽が確認された

3、同1月27日根上りつくり実施。

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 (1)この細根は全長650ミリ、太さ1,2ミリ以下である。(長所と見るか短所と見るかそれぞれですが、この細長さを私はまれに見る逸品と見ました)
 (2)細根に1ミリのアルミ線を沿わせ写真2のようにラフィヤで保護する。

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ラフィヤ巻きのポイント
 イ、ビニールハウス等風の当たらぬ場所で
 ロ、細根とラフィヤを水(HB101数的と発根剤を入れた)に5分浸ける
 ハ、1ミリのアルミ線の先端を何処かに固定する(抜けない様に)
 ニ、アルミ線に合わせ細根とラフィヤ(添え)一本を添わせ別のラフィヤ(巻き)で共巻きする(最長1,2m品は温室の天井にアルミ線を固定しました)
 ホ、巻き終わりを添えラフィヤの端と巻きラフィヤの端で縛る(途中でラフィヤが不足した場合は追加して)
 へ、細根とアルミ線は巻かずに、沿わせるようにする(根が太っても良いように)
 ト、作業中乾燥した場合は霧水を施す

 (3)根上り風に形をつける

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  この様に自由に曲がるので価値がある。先端は10ミリ位出して、根の部分は切らずに全て植え込むと発芽が良く、次年度又細根が採取できる。
 (4)植え付け

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写真は右流れと左流れに植え付けたものであるが、意外と左流れの樹が少ないのは右手作業によるものと考えます。然し、飾る時のことを考え、左流れを意識して作ると便利です。細根ですから自由になりますので是非お試し下さい。


5、ネット張り

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通常植え替えと同様にネットを張り形を整えます。

応用について
根伏せでこの様に処置するのですから、通常の根上がりつくりも同様に処置するのは当然の作業ですし、通常植え替えにも随所で活用します。
 ①ズミ、老爺柿、キンズ等の根伏せもお試し下さい
 ②松柏、チリメン桂、ウグイスカグラの根上りにも応用下さい
 ③以後の作業も同様に処置することが条件です。

6、鉢から出ている部分の保護

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ビニールポットをカットし鉢の大きさより少し小さめに筒を作り、細根の先端が顔を出す様切断又は側面に孔を明けます。
(セロテープやビニールテープでは雨水で剥がれますのでホッチキス又は紙のマスキングテープで止めて下さい)

7、曲付けした部分にかぶせ保護(写真6)

1~1,5ミリの用土をすきこみます。理由は細根の部分に隙間無く用土をすきこむためです。
充分用土をすきこみましたら、筒と鉢を針金で固定し、灌水を行います。
大事な作業はヨウジで正面の印しをすることです。4~5月頃行う一番針金掛け(芽押させ針金)の時、樹形の流れに反した枝つくりをしてしまう失敗があります。

真柏や杜松の針金掛け後の保護の様に水苔を使用しても良いのですがこの方法が一番生育は良いです。
ただし、黒や緑のビニールは根が太りますので細い根上りがお好みの方は白(透明ではない)のビニールをお勧めします。

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8、一鉢から採取できた細根の根上り

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一鉢の植え替えで通常の方は捨ててしまう筈の細根。細くて自由に曲がるのもミニ盆栽には大きな長所であります。
(写真4)の樹姿は力量感と繊細さを併せ持つ様は、創造しただけでぞくぞくします。
尚、この根上りの姿に即した枝つくりは、ある程度伸ばしてつくります。
9、今後の作業

1年目(今年)

①1週間に一度HB101数滴とメネデール200倍希釈を噴霧又は浸漬。
②3~5月に新芽(一番芽)の柔らかい間に、細いアルミ線(0,6~0,7ミリ)で基本樹形をつくります。(この年は、真に不必要な新芽を除き全ての新芽を使い切除しません)針金を掛けると二番芽が出やすく、8月上旬まで必要に応じて針金賭け、針金外しを繰り返す(最短2週間で針金外しが必要になります)
③肥料は、鉢底に根が確認されてから水肥(ハイポネックス2000倍)。二番芽が出始めたら燐酸分の多いもの(おまかせ等)。消毒は通常通りでOK。
④樹の輪郭を作ることに専念する
⑤9月中旬保護ビニール除去とラフィヤ、添えアルミ線除去。
⑥保護部のひげ根切除。必要に応じて(軽い)再針金
⑦紅葉したら植え替え可(又細根が在りましたら1、(2)のように細根保管)
 太さを要す場合植え替えはしない。

2年目

①枝つくり
 イ、6センチ樹高では、8、6、4ミリの枝分かれで
 ロ、9センチ樹高では、10、7、5ミリの枝別れを基本)。実は付けず枝つくり専念のこと。
 ハ、スミセブン200~300倍(成長調整剤)を強い芽のみに噴霧(芽の伸び始めの噴霧が効果大)又は針金掛けにより成長抑制させ花芽を付ける。
②施肥は、目的と針金掛け頻度に合わせて行う
③太らせたい方は、捨て枝一本を走らせる(捨て枝にはスミセブン、針金、厳禁)
 ※尚、前年採取した細根(前年、根を切除せず植え付けた理由がここにある)の根上りつくり作業を写真1~7に添って実施すること。忘却ナキコト

3年目

 ①3月芽吹き直前本鉢に植え付けする。
 ②開花したものは花に雨水を掛けないよう棚下又は軒先で管理する
 ③天気が良く風の無い場所でズミ、花カイドウの雄花で受粉する(自然受粉に任せると実の大きさが不揃になり、又、展示時期を遅らせたい場合は施肥を多く遅くまで実施するため。実が落下し易いカリ分を多くして実の落下防止をしても完熟を遅らせることは出来ない)
 ④不要実の摘果一枝2個以下
 ⑤コケ張りをして実をワックスで磨き展示する。"ただそれだけです"

尚、ビニール袋で保管するのは、根、挿し木台、挿し穂、植え替えが間に合わず翌日に延期する時など活用できます。
推奨できませんが冬に山取りした雑木を黒のビニール袋で保管し、春鉢上げを行う事例も多く聞きます。
畑や庭に仮植えするのと同様の効果が得られ、老爺柿はビニール袋の方が発芽率は高い様です。
 何か珍しい実験や検証結果(OK、NGに関わらず)が在りましたら教えて下さい。

5月 カイドウ 針金かけと呼び接ぎ及び取り木準備

1.素材

盆裁仲間から頂戴したカイドウ素材。
08年の挿し木とのことでした。
矢印は、挿し木した挿し穂の長さを示しているが1.5cmと長く、プチサイズの盆裁には不向きであるため秋までには、取り木をすべく針金かけを行い、更に呼び接ぎによる次年度の素材つくりをすることとした。

5月 カイドウ 針金かけと呼び接ぎ及び取り木準備1


2.針金かけ、呼び接ぎ、取り木準備


矢印Aには呼び接ぎをして将来に備え、矢印Bには細針金を巻き付け取り木準備、発根の確認後水苔を付け、秋には鉢上げ予定。
矢印Cは、呼び接ぎ部の活着状態を見ながら取り木準備し、生育状態がよければは今年度中に、通常であれば来春取り木外しを実施。
その後は、生育状況に合わせ取り木、挿し木、根伏せ等を繰り返します。

5月 カイドウ 針金かけと呼び接ぎ及び取り木準備2

3.拡大写真

この欄は、取り木外し状態等報告

5月 カイドウ 針金かけと呼び接ぎ及び取り木準備3

カイドウ ※超推奨樹種
分類 葉物類 実施時期(於:富士市)
植替 頻度 若木⇒2年  古木⇒3~4年 11月~2月 樹の固定 根伏せ素材確保
根切除 2/3、走根は元で 1/3、走り根
使用土 赤玉8、桐生2 赤玉8、桐生2
使用鉢 仕立鉢、 鑑賞は色物鉢
鉢サイズ 模様木、直幹木⇒樹高と同程度、その他⇒樹形に適合させて
植位置 鉢の空き寸法は流れ方向1,6、反対方向1、前後1:1、直幹はケヤキ参照
植替後 防風、防寒対策
整姿 樹寸法 模様木⇒上下1:左右1,6直幹木⇒上下1:左右1,4比、 株立ち、懸崖⇒上下1:左右2
針金 培養中⇒アルミ線、鑑賞品不可 3~9月
枝引き 培養中⇒アルミ線、鑑賞品不可 随時
芽掻き ピンセットで 随時
芽摘み ピンセットで 随時
芽切り 鋏で 随時
葉刈り 可能、但し花芽付かず 6月まで
葉透し 混んでいる部分 随時
葉切り 可能 随時
力枝 幹、枝の太さ調整 随時
呼接ぎ 新芽を 4月~7月
灌水 水かけ 表土白く乾いたら 各自頻度設定
腰水 水通りの悪い鉢のみ 随時
葉水 好む 夕方
置場 日照好む、通風好む -
肥料 少量(燐酸主体の肥料) 9~10月少量
害虫・殺虫 油虫他 毎月、5月末と7月末の産卵、孵化時2週連続
何れも可、2種類を交互に、石灰硫黄合剤
病気・殺菌 強い 同上
何れも可、石灰硫黄合剤
交配 リンゴ、カイドウの花で※交配後花に雨水をかけないこと 開花時の午前10時
増殖 実生 可能、経験なし 採取時又は春
挿し木 古枝挿し ※推奨事項 3月芽吹き時、新芽挿し6月
根伏せ ※超推奨事項 11月~3月
取り木 結束、環状剥離 ※推奨事項 環状剥離6月、外し9月下旬
接木 樹種変更に有効 3月 呼び接ぎ随時