2月 アケビの古枝挿し

平成19年1月27日、富士山盆栽組合の主催するオークションに久方ぶりに出かけた。
目的は、アケビの挿し木になる様な種木(盆栽培養の原材料)を入手することであつた。

下見(オークション開始前狙いの品を見定める)中、30cm程のアケビに目星を付けた。
同席した盆栽仲間のK・I氏もこれはものになるね!私も同感であった。

オークションが開催され、幸い狙いの入手することが出来た。
価格も6千円で落札しそうであったが、6,500円の追随者が出たため8,000円に高飛びして入手した。
落札推定価格を12,000円に考えていたので随分得をした様な気がした。

1、現状

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写真1は、カイドウの取り木偏で紹介した樹と同じ方が所蔵していた様子であり、枝打ちは希望するレベルに行われており秋にはアケビのプチ盆栽が30鉢程出来るはずである。
今年は、暖冬のためか既に芽の先端は緑になり始めている。
今日は2月5日であり昨年より15日早いが挿し木を開始することとした。

2、作業日程

(1)現状宇調査、挿し木構想案 2月5日
(2)挿し木作業実施      2月6日午前3時~10時
(3)管理作業         7月下旬まで継続(以後通常培養可)

3、挿し穂の現状

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いずれの枝も1~3cmの太さでありプチ盆栽としては、最適であり大小さまざまな樹形も期待出来る。
特に、蔓ものであるアケビは、発根が良く挿し木盆栽としては最適であり、直接化粧鉢へ挿しても充分活着する実績は多くある。

4、挿し穂つくり

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写真5、6の挿し穂つくりは不要枝を切除し、切り出しナイフで切り直した後トップジンを塗付、トップジンをティシュペパーで拭き取る。
一連のこの作業は、挿し穂つくりに限らず枝、幹の切除作業後の処置として欠くことの出来ない大事な作業です。
特にアケビは腐り込み易い樹種です。

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写真7~9はそれぞれ狙いに合わせて切り離しますが、この時少し長めに切り離すこと。
後で切り口を切り出しナイフ(兼進製接木ナイフ材質白紙1号)で切り直し作業要すため。
太い部分は、鋸を使用します。
可能な限りすばやく切り離すことが必要です。
その為には鋸が切れる様、鋸刃のヤスリ掛け作業も習得しておく必要があります。

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切り落とした刺し穂は写真10の様に、500ccの水に発根剤2,5cc+HB1012~3滴を入れた中に入れます。
 挿し穂は、全て切り出しナイフで切り直してトップジンを塗付。

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又、大きな切り口には、更にカットパスターで木質部のみ保護します。
これらの作業は、発根や活着に大きな影響を与えます。

5、挿し木床(鉢)つくり

挿し木をする場合、挿し床を使用するのが一般的ですが、私は直接鉢に挿します。
理由は、挿し木がやがて、発芽、発根をしていきますがこの時、樹勢が旺盛であれば押さえ針金を行う場合があります。
その為、鉢に小分けされていると作業が容易であり、又、各々の状態の観察が容易であり、鉢別管理が可能なためです。

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写真12は、通常用土(皆さんが使用している)にプラス1mm程度のミジンを挿し穂の接触する部分に加えます。
この時、ミジンを加える部分は少し用土を減少させると良い。
鉢は、挿し穂太さの1、6~2倍(ほぼ植え付けと同じ)を使用します

6、挿し木作業

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挿し穂を用土の上に載せ、軽く押し付け写真13の様に針金で固定し充分に灌水(発根剤+HB101入り)する。

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挿し穂固定後は同じく、発根剤+HB101入りの水苔を写真14の様に2箇所載せアルミ線で固定します。
水苔の載せ方は、発全体でも良いのですが私は通常は2箇所に対象で置きます。
場合によっては発根を浴したい部分のみに置くおこともあります。
確たる、データーは在りませんが全面に置く水苔の量を指定箇所に置き、1鉢の中に乾燥する部分と、乾燥しない

部分を作ることは、挿し穂に刺激を与える物理的条件が整ているものと自己判断しているためです。

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写真15は写真1の素材から出来た挿し木の全てです。
まだ水苔を置いてないものもありますが計19本の挿し木と写真16の台木が出来ましたので合計20本です。
素材を8千円で購入しましたので一鉢当たり400円となります。

7、挿し木後の管理

―実は挿し木で大切なのはここからです!―

①当初の置き場所は、朝日が2時間~3時間当たる場所(棚下等)で、保護キャッププラス寒冷斜45%で管理し、花は随時取り除く。
②本葉が出てきた状況に合わせて徐々に寒冷斜を除く
③本葉が固まって来たら棚上げする。(発芽状態によって各々の鉢に差があるので状態の整った鉢から順次行う)
④基本的には、一番芽が間延びしてもそのまま伸ばし続ける。
⑤遅くても7月上旬までには2番目が出る、この芽が将来を決するのである。枝に曲をつけたい時は針金掛けで、枝を伸ばしたくない時は芽が出始めるとき、その芽の部分のみに成長調整剤(スミゼブン300倍)を噴霧する。(根や他の芽にかからない様に)
⑥7月中旬以後徐々に一番枝(間延びした)切除し、2番目に力点を置く手入れを行う。

8、台木の処置対策

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写真16は、不要枝の切除及び、根の切り込みをした状態です。
根は鋏や又切りで概略切除し、その後切り出しナイフで綺麗に切り直し、(これは富士樹会YO氏が30年程前から実施する方法で、一気に根を切り詰める場合欠かせない作業です)トップジンを塗付し拭き取り、必要に応じてカットパスター保護をし、写真17の様に植え付ける。
上部を挿し木したので大きな傷がある。このため焼け込み防止策として考えられる神付けと樹皮の部分にはトップジンを塗付しが焼け込みが出来る危険性はある。
この時、焼け込むことを考慮(PPA=処置がNGだった場合はどうするか案を立てておくこと)した培養が必要である。
アケビは焼け込み易い樹種である。

9、切除した根を生かす

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写真18は、アケビの根である。自生しているアケビは何十メートルも細く長く伸びる。
富士川は急流であり、昔はこの急流と秋口から魚が海に下る習性を利用して「もじり」や「やな」と云う漁具で鮎等を捕獲していた(今は禁止されている)。
この時の漁具を作るのにアケビの根や蔓が使われた。
理由は、水の中でも腐りにくい性質からとのことである。

アケビの根は伸びていきながら1メートル間隔位に根や芽が出ていたのを記憶している。
アケビの根伏せの経験は無いものの、これらの記憶の検証は価値があると考え実施する事とした。

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写真19は、ズミやカイドウ等と同じ方法でビニール袋に保管し、発芽を待つこととした。

10、追記

発根や活着から展示までの追跡を順次行い情報提示することで、盆栽つくりの一助となれば長年小品盆栽を楽しませて頂いた山の神へのお礼になるものと考えております。
又、結果の出る前にこの様な記録を提示することは、的確な作業や管理をする様、自分にプレッシャーを掛けるためでもあります。
幸いこの記録を見た方が同様の作業に取り組み、経緯や結果の情報交換が出来れば培養知識・技能向上に繋がりこの上ない喜びであります。
(平成19年2月7日現在)

11、第1回経過報告

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写真20は、挿し木後40日経過した状態です。写真20の右を写真14と対比して下さい。
樹勢の良いものは、写真はダリの様に保護キャップに当たり曲がっていますがまだ鉢孔に根は確認されません。
このまま伸ばし続けますが強すぎる新芽は4月初旬に新芽の先端を1cm程切除する予定です。
いきなり短く切ると新芽が元から枯れることがありますので注意が必要です。

尚写真15に在ります挿し木19本で枯れたものはありません。


12、第2回経過報告


2007年9月17日
写真18、19の根伏せ用根からの発芽見られず、処分。
又、挿し木結果は発根17本、枯れ死2本であつた。
枯れた2本は室出し後