(1)盆栽を始めるに当たり
手のひらに乗るプチ盆栽は、可愛いものです。然し、樹木の立場で考えて下さい。自然界であれば、数百年、数千年も生きる樹木を、杯の様な鉢に植え付けただ頑張れだけでは無責任です。我々は「盆栽は樹木に対する虐待である」ことを常に認識し、盆栽と向き合うことです。
(2)培養のポイント
- ものづくりの基本は三現主義(現場で現物を現実的に)であります。
現実的とは、観察や検証して実感することですが、肉眼で見ただけでは、時によってバラツキがありますので、ルーペで拡大して見ることや、物さしで測ることが現実的見方と考えます。
- 盆栽や写真では無く、水墨画等絵画を参考にする。
樹形が解りやすい、「郭煕の早春図」参照のこと。これは種々の樹形を現し、幾百、幾千年を表現している
- 大型盆栽の名品を観察して、幹や枝つくりの参考にする。
大きな盆栽の針金かけは、指先で出来ますがプチサイズでは、指がジャマになり思う様に針金が掛かりませんので、ピンセット等を使い針金を掛けます。
- 目標、狙いを明確にする。
- 樹種を数種類に絞り徹底研究する。
同一樹種及び作業を10鉢以上培養し結果を平均値で判断すると自信になりますが一鉢の結果では自信が付きません。
- 時間を充分かけ丁寧作業する。
何年も修行し、専門的知識と技術、技能を身につけたプロと同じ様に上手に盆栽をつくることが出来ないのは当然です。
然し、我々愛好者は時間無制限ですので、プロが数分で行う作業を1時間掛けても1日掛けても良いのですから(但し、接木は別)我々は、プロ以上に丁寧な作業をすることが出来るはずです。 即ち、時間をかけ、丁寧で繊細な盆栽づくりが愛好者の妙であります。
- 自分の生活環境に適合した樹種選択する。(自生地を観察して)
- 自分の小遣いの範囲であること。
日本人の平均的趣味に要す金額6千円/月(2007年1月朝日新聞)とのことです。これが家庭円満で、趣味を長続きさせるポイントと考えます。 私の場合を考えますと夫婦喧嘩の大半が、この範囲を超えた時だった様な気がしますので、妻には、申し分けないと思っています。
実生や挿し木でも。3年経てば3年、5年経てば5年生、10年生、20年生それぞれの顔や風格が楽しめます。 この年になり、実生や挿し木等自分の寿命に間に合わないと言う方がおりますが、大きな間違いです。
それは、樹木の寿命は人間より遥かに永いことを忘却しています。誰かが種を蒔き、誰かが育て、誰かが楽しむというフローは、考えるだけで楽しいものです。 100歳にして実生や挿し木を行う事は、正に種まきであり盆栽に関わる人の責務と考えます。
「大山の 神を恐れて僅かでも 挿して増やすは 詫びるおもいが」であります。
樹木特性を知り、生長を観察し補助する。
樹自身が99%自力で出来、残り1%を我々が補う、これが盆栽創りでありこの1%を心込めて作業することです。あえて、盆栽を造ると云う言葉にしますと、それは、樹木の生長力を活用する作業であると考えます。
- 成長を観察し、課題を見つけ直ぐアクションする
明日では、遅すぎますし忘却もします。 仕事と同じであり、考えている、悩んでいるだけでは、前進しませんのでその時出来る改善行動をするのみです。
- 鉢、用土を清潔にする(害虫、細菌対策)
- 鋏やナイフの切れ味を確保する。
切れるナイフで切った傷と、鋸で切った傷では治りが異なり、盆栽も当然、切り口処理や治療処置が当然必要です。
- 消毒(病虫害対策)肥料はやらなくても水掛けと消毒は励行する。
殺虫剤、殺菌剤、添着剤を混合して散布するのですが、混合不適合なものがありますので各薬液の使用用途、注意書きに添った使用をして下さい。 私の消毒頻度は、月一回ですが、静岡県の気候では、5月末ごろと7月末ごろ産卵が多い様ですのでこの時期には、一週間の間隔を置き2回消毒しますが殺虫効果が高い様に思います。
又、1種類では、抵抗力が付きますので2種類を準備し、交互に使い分けることが殺虫効果を高める方法です。