1、写真-1に付いて
写真-Ⅰに立て札がありますが、この説明が欠如していましたので付け加えます。
T1=赤玉8:桐生2
T2=赤玉1:桐生3:矢作1
T3=桐生1:矢作3
T1は私が雑木類に使用している用土ですが、T2~3は愛好家諸兄から教えて頂いた用土配合です。
写真11の配列が写真1と逆になりましたが、太さ、芽当たり、根の粗さ等に差が在ります。
小根が多く見られるのは、ネット鉢を使用したためです。
ネット鉢やザル鉢を使用すると生育の良い根が伸びても鉢の位置で生育が止まりそれ以上伸びず、別の根が伸びる。
これが繰り返されるため根数が増加のです。
通常鉢の場合強い根が一本異常に伸びる、いわゆる走り根が発生しますが、ザル鉢ではどんな樹種でも写真10様な根が得られます。
但し、根伏せを考察した樹種に付いては、ザル鉢やネット鉢では面白い根曲が得られませんので一考下さい。
写真11は、植え替えのため根を切除した状態ですが生育状態が顕著に現れています。
僅か一年でこの差ですので、用土選択は大切です。
根元から5㎜上った部分の平均太さは、T1が5,5㎜、T2が10㎜、T3は8,5㎜でした。
2、3年目の植え替え
結果的に見れば、T2の条件が最も良くネット鉢も狙い通りでしたが、3年目以後の培養管理は次ぎの様に考察しました。
前提条件:樹高:60㎜、根周り:40㎜、根元幹太さ:25㎜、納期:10年秋
(1)選定、用土:赤玉1、桐生1、矢作1。使用鉢2号中深鉢
選定理由
イ、赤玉土は、保肥性に富み肥培効果が期待できる。
ロ、桐生砂は、弱酸性であり樹木の生育条件に適合する。
ハ、矢作砂は、三河黒松の生息条件に類似させる。
二、2号鉢は、目的達成だけを思考した場合ザル又はネット鉢が選定したいのであるが、ザル等はグロテスクであり、今後PB盆栽を愛好して頂ける可能性のある来訪者に対して、粗悪感を抱かせることを避けるため、少し時間は掛かりますが2号中深仕立て鉢を使用することとしました。
(参考までに、静岡で松を多く培養している方は、3年で30ミリ位の太さにしています。10センチ以上の小品盆栽を目指す方は、ザル鉢をお勧めします。尚、根は一切切除せず毎年鉢を大きくし、肥料は油粕の玉肥で肥培しています)
(2)植え付け
写真11から更に根を切除し、植え付けてあるため小根が殆んど無いので、写真12の様に鉢にしっかり固定します。
植え替え時、伸ばしてある力枝は、切除しないこと。
力枝を切除して植え替えると枯れる確率が高いので注意方。
力枝の切除は、7月中旬の芽摘み時期以後です。
(3)植え付け後の処置(保護)
写真13は、小根が無いので表土部分に水コケを載せ乾燥防止をします。(鉢底に根が確認出来たら除去)
(4)今後の管理
今年は、力枝の切除はせず懐枝で節間の詰まった枝数を増加させることに専念し、植え替えは、毎年を基本にしてPB盆栽ならではの根姿を狙います。
08年3月20日現在。
黒松は、盆栽飾りに欠くことの出来ない樹種ではありますが、皮肌が荒れるまでには長い年月を要しますので今まで実生づくりは行いませんでした。
然し、我々が楽しむ9cm以下のプチ盆栽には、サイズ、振り、枝つき等希望するものが見当たりません。
やむなく実生からつくることにしました。
1、06年の実生挿し
写真1は、06年に実生したものです。
07年5月30日現在の状態です(立ち上がり5mm、樹高8cm(内07年に伸びた新芽6cm))。
07年2月3日に1,5号の鉢から80ミリのネット鉢を作り鉢替えしました。
本来は2号のビニール鉢に実生挿しすれば昨年の中に8cmぐらいにはなるはずです。
曲付けは06年7月中旬に行いました。
10cm以上の盆栽をつくる方は、実生した翌年の春に針金掛けを行う様ですがプチサイズの盆栽の場合、実生挿しした年の7月に行うと鋭い曲げが可能です。
目標太さ25mmを考えています。
私がプチ盆栽の手ほどきを受けた渡辺幸男翁によれば、実生挿しの曲付けは7月20±5日に行い、9月上旬から可能な限り肥料を与え太らせ、皮肌を厚くすることにより皮肌荒れが促進できるとの事でした。
黒松といわずその他の樹種でも同じことが言えます。
2、実生ざしの実践報告
写真2は、07年3月実生した物です。昨年の国風展で購入し写真1のように実生した残りの種です。
ビニール袋に入れ冷蔵庫の野菜と一緒に保管して置きましたものを一昼夜水に漬け沈んだものを蒔きました。
写真2の様に実生したものには、生育のバラツキがあります。生育の良いものは、今後の樹勢も旺盛ですので太幹の樹つくりに当てます。
生育の悪いものは、細幹の樹つくりに使用して下さい。
写真3は、通常の用土の中心に人さし指大の凹みを付けミジンを入れます。
(成績の良い用土は矢作砂5桐生砂4赤玉土1でした)
写真4は、写真3を腰水に漬けた状態です。
写真5は、切れるカミソリで小葉から下5mm程に切除しトップジンMを塗付したものです。
写真6は、挿し穂固定のためのフックを作り写真7のように小葉を押え灌水しても挿し穂が動かない様にしました。
3、静岡支部連合たちばな会支部、支部長の美濃部さんから求めた実生5年生
写真8は、実生3年生を美濃部支部長から譲って頂き私が2年作りましたものです。
この樹は、根から幹に?がる部分に異常な太りがあり、絞りはありませんが面白い樹形です。
立ち上がり部は4cmあり現在の樹高は8cmですが7月に芽切りしますと今年は6cmで維持できます。
美濃部支部長によりますと、実生してから春に曲付けし、根は切除せず毎年鉢を緩め培養したとの事です。
3年生の時は、5号鉢に入れてあり樹高は50cmありました。
写真9の傷は15mmの太さで力枝を切除したものです。
4、5号鉢から写真8,9の鉢に植える時の厳守事項とステップ
(1)植え付ける鉢の大きさにあわせ根を切除する。(植え替え時期吉野桜の咲く頃)
(2)水はけの良い用土で植え付け樹と鉢を縛りつけ固定
(3)50cm位在る力枝は、切除厳禁。植え替えと同時に切除しますと小根が出ません必ず(100%)枯れます。(私も検証し枯らしました)
(4)転倒防止策を施し、通常管理する。
(5)黒松芽切り時期(7月中旬)に、50cm位ある力枝を切除目標の部分から5cm位はなれたところで切除(この部分に松葉は無くて可)する。
(6)10月頃目標部分で切除します。
(7)後は、毎年枝数を倍々にします。
ポイント1は、小葉下の切除が短ければ低い位置から枝が出ます。
ポイント2は、大きな鉢(5号鉢)から2~3号の大きさに入る様に根を切りますと、(転倒防止が必要となります)
※ ポイント3は、力枝を切除した時(培養年数-1年)×2芽につくりたいですね。
※ ポイント4は、ネット又はザルで培養しますと多くの小根が確保出来ます。
考えて見ますと、100年の持込樹も棒木はあくまでも棒です。
振り、揺すりがあり古色感のある樹形をつくりたいものです。
実生も馬鹿に出来ません。
昨年の協会主催の交換会に出た10年そこそこの若い黒松が20万円位で落札されていました。
写真8の樹も現在枝数は8枝ですが、今年中には16枝、来年は32枝です。
枝抜きが必要になりますね! 正に「実生侮ること無かれ」です。
07年5月30日現在。
では継続的報告を致します。