プチ盆栽の増殖に欠かせないのが根伏せである。一鉢植え替える度に2~3鉢出来るのですから、これをやらない手はない。
然し、全の樹種で根伏せ出来る訳ではない。お勧めできる樹種は、ズミ、カイドウ、リンゴ、ロウヤガキ、キンズ等である。今回は、カイドウに単純細根を使い、作業を紹介致します。
1、平成18年10月21日友人に分けて頂いたカイドウの植え替え実施。
(1)面白い曲がりをしている根は、同日根伏せ、樹の部分は通常の植え替え実施。
(2)1~1,5ミリの細根が鉢底でグルグル巻きになっていたものを
イ、切り口にトップジン塗付後、ティシュテーパーで拭き取りビニール福利に入れ
ロ、500CCの水にメネデール2,5CCと HB 1012~3滴入れ噴霧
ハ、袋を密閉し温室の中の日陰に保管(半月毎位に湿度確認:水溜り無く根が湿っていればOK)
2、平成19年1月20日先端部に発芽が確認された
3、同1月27日根上りつくり実施。
(1)この細根は全長650ミリ、太さ1,2ミリ以下である。(長所と見るか短所と見るかそれぞれですが、この細長さを私はまれに見る逸品と見ました)
(2)細根に1ミリのアルミ線を沿わせ写真2のようにラフィヤで保護する。
ラフィヤ巻きのポイント
イ、ビニールハウス等風の当たらぬ場所で
ロ、細根とラフィヤを水(HB101数的と発根剤を入れた)に5分浸ける
ハ、1ミリのアルミ線の先端を何処かに固定する(抜けない様に)
ニ、アルミ線に合わせ細根とラフィヤ(添え)一本を添わせ別のラフィヤ(巻き)で共巻きする(最長1,2m品は温室の天井にアルミ線を固定しました)
ホ、巻き終わりを添えラフィヤの端と巻きラフィヤの端で縛る(途中でラフィヤが不足した場合は追加して)
へ、細根とアルミ線は巻かずに、沿わせるようにする(根が太っても良いように)
ト、作業中乾燥した場合は霧水を施す
(3)根上り風に形をつける
この様に自由に曲がるので価値がある。先端は10ミリ位出して、根の部分は切らずに全て植え込むと発芽が良く、次年度又細根が採取できる。
(4)植え付け
写真は右流れと左流れに植え付けたものであるが、意外と左流れの樹が少ないのは右手作業によるものと考えます。然し、飾る時のことを考え、左流れを意識して作ると便利です。細根ですから自由になりますので是非お試し下さい。
5、ネット張り
通常植え替えと同様にネットを張り形を整えます。
応用について
根伏せでこの様に処置するのですから、通常の根上がりつくりも同様に処置するのは当然の作業ですし、通常植え替えにも随所で活用します。
①ズミ、老爺柿、キンズ等の根伏せもお試し下さい
②松柏、チリメン桂、ウグイスカグラの根上りにも応用下さい
③以後の作業も同様に処置することが条件です。
6、鉢から出ている部分の保護
ビニールポットをカットし鉢の大きさより少し小さめに筒を作り、細根の先端が顔を出す様切断又は側面に孔を明けます。
(セロテープやビニールテープでは雨水で剥がれますのでホッチキス又は紙のマスキングテープで止めて下さい)
7、曲付けした部分にかぶせ保護(写真6)
1~1,5ミリの用土をすきこみます。理由は細根の部分に隙間無く用土をすきこむためです。
充分用土をすきこみましたら、筒と鉢を針金で固定し、灌水を行います。
大事な作業はヨウジで正面の印しをすることです。4~5月頃行う一番針金掛け(芽押させ針金)の時、樹形の流れに反した枝つくりをしてしまう失敗があります。
真柏や杜松の針金掛け後の保護の様に水苔を使用しても良いのですがこの方法が一番生育は良いです。
ただし、黒や緑のビニールは根が太りますので細い根上りがお好みの方は白(透明ではない)のビニールをお勧めします。
8、一鉢から採取できた細根の根上り
一鉢の植え替えで通常の方は捨ててしまう筈の細根。細くて自由に曲がるのもミニ盆栽には大きな長所であります。
(写真4)の樹姿は力量感と繊細さを併せ持つ様は、創造しただけでぞくぞくします。
尚、この根上りの姿に即した枝つくりは、ある程度伸ばしてつくります。
9、今後の作業
1年目(今年)
①1週間に一度HB101数滴とメネデール200倍希釈を噴霧又は浸漬。
②3~5月に新芽(一番芽)の柔らかい間に、細いアルミ線(0,6~0,7ミリ)で基本樹形をつくります。(この年は、真に不必要な新芽を除き全ての新芽を使い切除しません)針金を掛けると二番芽が出やすく、8月上旬まで必要に応じて針金賭け、針金外しを繰り返す(最短2週間で針金外しが必要になります)
③肥料は、鉢底に根が確認されてから水肥(ハイポネックス2000倍)。二番芽が出始めたら燐酸分の多いもの(おまかせ等)。消毒は通常通りでOK。
④樹の輪郭を作ることに専念する
⑤9月中旬保護ビニール除去とラフィヤ、添えアルミ線除去。
⑥保護部のひげ根切除。必要に応じて(軽い)再針金
⑦紅葉したら植え替え可(又細根が在りましたら1、(2)のように細根保管)
太さを要す場合植え替えはしない。
2年目
①枝つくり
イ、6センチ樹高では、8、6、4ミリの枝分かれで
ロ、9センチ樹高では、10、7、5ミリの枝別れを基本)。実は付けず枝つくり専念のこと。
ハ、スミセブン200~300倍(成長調整剤)を強い芽のみに噴霧(芽の伸び始めの噴霧が効果大)又は針金掛けにより成長抑制させ花芽を付ける。
②施肥は、目的と針金掛け頻度に合わせて行う
③太らせたい方は、捨て枝一本を走らせる(捨て枝にはスミセブン、針金、厳禁)
※尚、前年採取した細根(前年、根を切除せず植え付けた理由がここにある)の根上りつくり作業を写真1~7に添って実施すること。忘却ナキコト
3年目
①3月芽吹き直前本鉢に植え付けする。
②開花したものは花に雨水を掛けないよう棚下又は軒先で管理する
③天気が良く風の無い場所でズミ、花カイドウの雄花で受粉する(自然受粉に任せると実の大きさが不揃になり、又、展示時期を遅らせたい場合は施肥を多く遅くまで実施するため。実が落下し易いカリ分を多くして実の落下防止をしても完熟を遅らせることは出来ない)
④不要実の摘果一枝2個以下
⑤コケ張りをして実をワックスで磨き展示する。"ただそれだけです"
尚、ビニール袋で保管するのは、根、挿し木台、挿し穂、植え替えが間に合わず翌日に延期する時など活用できます。
推奨できませんが冬に山取りした雑木を黒のビニール袋で保管し、春鉢上げを行う事例も多く聞きます。
畑や庭に仮植えするのと同様の効果が得られ、老爺柿はビニール袋の方が発芽率は高い様です。
何か珍しい実験や検証結果(OK、NGに関わらず)が在りましたら教えて下さい。