6月 キンズ 植え替え

2007年6月4日、キンズつくりの名士である春日井の毛利さん宅を訪問、キンズつくりのアドバイスを得る。
紹介者の田中さんと共に同行した高井さんは、成績がいま一つのキンズを回復させて貰うため持参した。
総数奇屋の邸宅とはアンマッチのTシャツに草履履きの氏は屈託の無い笑顔で迎えてくれた。

早速、高井さんのキンズを診断。
良い木である随分出しただろうと云いながら鉢抜きし根の状態を確認して曰く、根の状態が健康ではない(白根はあり)根に充分酸素が供給されていないためである。
葉厚が薄い過保護な管理のためである。等であつた。

過保護はあらゆる植物に共通するが生命力を低下させる。
冬の管理もムロ等に入れず軒下にあくレベルである。
作業時の気温、根への通気性、肥培を考慮すれば、キンズは非常につくり易い樹種とのことであった。

然し、私の盆栽はプチサイズ。
ムロ入れ時の川柳は、「極寒の野山の木々は寒かろう、布団に入れよ、君は特別」であり実践には勇気がいる。
氏の話の中に、「国風展に出展するとき鉢替えをする人がおり、ことごとくキングを痛めてしまっている」があった。
クチナシやチリメン桂等と同様寒さに弱い樹種は、気温の低い時期に植え替えや針金かけをすると生育が極度に低下した経験がある。
要は、寒冷時に植え替えや針金かけ等樹を劣化させる作業をしなければ良いことになる。

これ等をヒントに、次ぎの事項を念頭にキンズつくりをすることにした。

ポイント
・寒冷時の全作業(植え替え、鉢替え、針金かけ、切り込み等)厳禁。
・培養管理は、クチナシ同様各作業は夜の平均気温15度以上で行う。(富士で5月下旬)
・用土は、赤玉中心の1ランク粗めを使用する
・灌水頻度を高め、酸素供給を豊富にする。(水切れによる根枯れ厳禁、過水による根腐りは少ない。特に鉢底の水切れ注意。同行の田中さん談)
・施肥は、クチナシの1、5~2倍とする。
・切除部全てトップジン消毒をする。
・黄ばみ等根傷みが発生した場合ベンレード等マイシン系消毒をする。

病虫害
・柑橘類であり、黒点病、灰色カビ病が予想される(ストロビードフロアブル等で殺菌)
・サビダニも予想される6~7月ミカンサビダニ用で殺虫
・意外と多いのがエカキ虫です。5~9月オルトランで殺虫

1、植え替えの実践

(1)植え替え前の観察

6-1-kinz-1.jpg
キンズ種木を購入。根洗いをして観察。
古枝の根元に新芽が確認される。
枝先の葉裏にエカキ虫、根の部分的な黒い部分は、培養中の異常が考えられる。古枝の劣化部と比例するものと思われる。
根は、長く残され先端は又切りで切除されたままであり黒い腐りが見られる。
本来は、植え替え1年が経過すれば切除部は完全に肉巻きするはずである。
立ち上がり部は適度な曲があるものの根が長くプチサイズの鉢に収まらない。

(2)方向の決定

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左の幹部は、そのまま使用。
中下の根は、根伏せと接木を同時実施。
右の根も同様根伏せと接木を同時に行い石付けにすることにした。

それぞれ、面白いプチ盆栽が出来るはずであるが初めての経験である。
クチナシと同じであれば可能と考える。

(3)作業の実施

それぞれの切除部は、鋭敏なナイフで綺麗に仕上げトップジン消毒しした。

写真(1)
6-1-kinz-3.jpg

写真(2)
根伏せと接ぎ木を同時にやったものである。ズミ等では実施してみたが成功した事はない。
これが可能であればキンズがつくり易い樹種である証明となる。
6-1-kinz-4.jpg

写真(3)
6-1-kinz-5.jpg

(4)植え付け後

それぞれ植え付け、用土が粗いため初期乾燥防止のため水苔保護。 6-1-kinz-6.jpg

(5)葉のある枝葉全て挿し木

2、植え替え後の管理

(1)植え替え直後の1週間は、テントハウス(天窓を開けた状態)で保護。
(2)同、1週間後から日当たりの良い場所に置き、保護キャップの上部カットしたもので保護。
(3)ブロックの上に置き、鉢の温度を上げ乾燥を促進して灌水回数を増加させ、酸素取り込み量を増やして代謝を促進させる。
(4)施肥は「おまかせ」「IB化成」「水肥ハイポネックス」それぞれ区分比較する。

3、生育観察(良否目安)

(1)鉢底から出た根が白色であること。
(2)葉は、濃緑色であること。

4、第1回経過報告(2007/9/27現在)

写真は左から写真(1)、写真(2)、写真(3)の経過である。
6-1-kinz-7.jpg

写真(1)は最も樹勢も良く鉢底より白根が見える。
写真(2)は緑葉では在るが鉢底の根は確認出来ていない。
写真(3)は根伏せ&接木品であるが活着しなかった。
右端の木は「根伏せと接木が同時に出来れば真につくり易い樹種」を証明したものである。

失敗品5本は、接ぎ部の台木の切断部を接ぎテープで保護せず水苔保護したもの。
成功品5本は、写真10の様に台木の切断部分に接ぎテープ保護、更に水苔保護したものでした。

後日ミカン農家の方に聞いたところ「そんなこと常識だ」と言われました。